ブログをご覧の皆様、こんにちは。
ちぃです。
新型コロナウイルス感染症による営業時間の短縮要請や外出自粛などの影響により、厳しい経営状況の飲食店。
そのような中で、さまざまなお店が新型コロナウイルス感染症対策の工夫を凝らしながら営業をしています。
今回は、以前にご紹介した大阪ミナミの南船場にあるカレー屋「橋本屋」さんに来訪した当社の設計部長よりお話を聞き、再度ご紹介いたします。
令和4年1月に来訪。
橋本屋の暖簾をくぐると、スパイスを挽くミルが奏でる音と、多くの香りが織りなす芳醇な空間が待ち受けています。
このお店を当社で施工させていただいてから、およそ15年になるでしょうか。
元々こちらのお店は、店主でありオーナーでもある橋本健一氏が、一人でバーを始められたのがスタートでした。
そこから数年経ちバーが軌道に乗ってきた頃、入口横の1坪ほどの空間にカレーの専門店を作りたいとご依頼をいただき、当社が改装させていただきました。
その「橋本屋」は、雑誌の「あまから手帖」の2018年10月号に大きく取り上げられ、更にはミシュランガイド2020でビブグルマンに輝き、2022年に至るまで3連覇を果たしている凄いお店となっているのです。
料理人兼オーナーの橋本氏は、バー時代は自分もバーテンダーとして働き長髪にされていたのですが、カレー屋を始める際に今の短髪にされました。料理人に徹するという強い覚悟と意気をその時感じたのを今も思い出されます。
当初カレー屋を考えておられた時、「一人一人のお客さんに合わせたオーダーメイドなカレーを作りたくて、他の人がやっていないやり方なんだけど、力になってもらえませんか」とご相談を賜り、カウンターの4席のみながら橋本氏の想いを形に作り上げました。
客席の奥の壁には、2020年に初めてビブグルマンを獲得された時に贈らせていただいた実物のパキラが入ったリーフパネルが今も飾られています。
「橋本屋」が提供するカレーは、チキンベースのスパイスカレーのみ。
メニュとしては、チキンがたっぷりで濃厚な味わいの「芳醇」と野菜とチキンによる「淡麗」の2種類。
辛さの加減は0~5の6段階でオーダーできる。今回は「芳醇」の辛さ1で注文しました。
食し方の手順は各テーブルに書かれており、それを見るだけでも単なるカレーではないことがわかります。
一からスパイスを挽いて作るので、最低でも20~25分は待ちます。
先客がいらっしゃれば40分待ちも普通です。
現在は、奥のバースペースを昼も利用しお待ちいただいています。
今回13時前の遅めに伺いましたが、その後もひっきりなしに来店され、40分待ちですがよろしいでしょうか?とお声掛けされていました。
それでも、待って食されるお客様がほとんどです。
そこには、儲け最優先の商業主義ではない商売のスタイルがある。
今のこの経済至上主義の時代において、稀有な矜持を貫く橋本氏の姿がある。
回転率の向上を計れば、売上げを上げることは出来るが、そこで出来たものは橋本屋のスパイスカレーではないのであろう。
多くのテレビ番組からの取材の申し込みも全て断られているそうである。
そのようなことを目的にしていないのである。
「この一膳が全て。」
顧客一人一人に辛さの加減を確認し、一膳ごとにスパイスを挽いて一から作り上げる。
その調理の過程で、火加減を調整しつつ出汁や具材を絶妙の頃合いで投入する。
また仕上がる直前には、橋本氏自らが小匙で各顧客ごとの辛さや出来上がりを一皿ごとに確認するという丁寧ぶり。
これら一連の所作をカウンター越しに垣間見ることができる。
更にはコロナ禍での調理なので、毎回生卵を割る際はその都度、割る直前の僅か1、2秒で手をアルコール消毒もされていた。
その手際の速さと正確さ、水の流れるが如き無我無心の動きはまるでその道を極める強者の無双の技にも通じる。
信念を貫き、自分はこれでやり抜くと腹落ちした人間のみが出せる、本物の強さと輝き。
効率や売上げを優先するのが当たり前のこの時代に、孤高に一膳を追求するこの姿こそが、この店「橋本屋」の真の実力、真価なのである。
橋本屋のカレーを食すには、顧客側も待ち時間という無理を強いられる。
その無理を経ても得られる顧客の満足感は、ある種の超越体験なのだ。
ミシュランで3年連続ビブグルマンに輝き、グーグルや食べログでは今も尚点数が伸び続けていることが、正にそれが真実であることを証明している。
気高き料理人がその一膳に全てを尽くす。
正に、大阪が誇る素晴らしき名店である。
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最後までご覧頂き、ありがとうございました。